『聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました』~ あらすじ・キャラ・見どころ紹介!

本作『聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました』は、
漫画:朝谷コトリ先生、原作:神山りお先生、キャラクター原案:たらんぼマン先生による異世界転生漫画です。

あらすじ

 野原莉奈は交通事故で家族を失い、一人生き残ってしまう。高校に通い、頑張って明るく生活しようとするも悲しみは癒えず、事故現場の橋で家族を想っていると、体が光に包まれてヴァルタール皇国へ「聖女」として召喚される。しかし莉奈に「聖女」としての素質は無く、国王の計らいで「異世界から迷い込んだ者」として保護されることに。

 王宮で暮らし始めた莉奈は暇を持て余し、質素すぎる食事に苦労していた。歯の立たない硬パン。野菜を煮ただけの薄味スープ。もう少しどうにかならないのかと不満を覚えていた先で厨房に行く機会が訪れ、そこで現代料理を作り上げて革命を起こす。

 莉奈の作り出す料理は料理人たちを筆頭に王族、兵士、使用人まで虜にし「美味しい料理を作る異世界から来た娘」として王宮に馴染んでゆく。

 

登場人物紹介

野原 莉奈(のはら りな)

 太りぎみの女子高生。交通事故で家族を失い、一人生き残ってしまう。中学生の頃は美少女と噂されていたが、家族を失ってから丸々と太り、男子学生から「ブタ」とからかわれていた。

 家族を失った事故現場からヴァルタール皇国へ「召喚」された莉奈は、召喚主であるヴァルタール皇国皇子エギエディルスからも「こんなデブは聖女じゃない!」と罵られてしまうが、負けない勢いで反論。その後、兄皇子であるシュゼル宰相に引き取られて王宮で暮らし、長兄王フェリクスの保護を受けて正式な庇護下に置かれる。

 莉奈は「聖女」として召喚されたがその力は無かった。しかし魔導師としての力、さらに鑑定などの技能が備わっていた事から、料理に関しては完璧な黄金比を作り上げる事に成功。貧相すぎる食事に革命を起こし、現代料理で王宮に暮らす人々を魅了してゆく。

 出会いは最悪だったが、日々を過ごすうちにエギエディルス皇子に失った弟を重ねて仲良くなり、エドと愛称で呼ぶようになる。

エギエディルス

 「瘴気」の影響を強く受けるヴァルタール皇国の末皇子。明るく元気な美少年。

 世界に満ちる「瘴気」が濃くなれば魔物が増え、動物も魔物化する。そうした時に「勇者」や「聖女」が現れて魔物を一掃し、世界を救ってくれるという伝承を信じて、国の為、民の為にエギエディルスは「聖女」を召喚する。しかし莉奈に「聖女」の力は無く、宰相である兄シュゼルに「誘拐犯」ではないかと手酷く叱責される。世界の為なのだから自分の行動は間違っていないと思っているエギエディルスは過失を認めず、兄に言われたからという理由だけで莉奈に嫌々ながら謝罪した。

 エギエディルスは莉奈の生活に不便がないように近付いて見守り、素直になれない態度で接していたが、莉奈の方はそうしたエギエディルスに失った弟を重ね見て、怒りや恨みよりも愛おしさが生まれ、笑顔で愛するように。するとエギエディルスの心もほぐれ、莉奈と仲良くなってゆく。

 そうした先でふと彼女が孤独に俯き、家族を想う姿を見て、エギエディルスは兄シュゼルの言葉を理解する。「自分は国の為に、民の為にという理由で莉奈に全てを捨てさせた。自分ならどうだろう。許せるだろうか…。」と。

 謝罪はできるが、帰してやる事は出来ない。エギエディルスは莉奈と向き合い「必ず幸せにする」とプロポーズではない誓いを告白する。

シュゼル

 ヴァルタール皇国の皇子。エギエディルスの兄でフェリクスの弟。この国随一の賢者で宰相。有能で、敵に回してはいけないタイプの性格をした美青年。

 食事嫌いで、ポーションを飲み果物を食べて生活していたが、莉奈の料理革命によって食事をするようになり、甘味の虜になった。莉奈の作り出す甘味は可愛い弟分であるエギエディルスの為のものであったが、余す所無く、むしろ自分の口に入らないなど許さないという態度で甘味を所望し、アイスクリームの為ならば何でもする男になってしまった。

フェリクス

 ヴァルタール皇国の国王。髪も瞳も黒い、漆黒の魔王のような王。魔物も逃げ出す覇気を持つ豪傑。内政の問題があり、皇国の「国王」を名乗っている。

 もしも自分が召喚されて「国を救う手伝いをしろ」と頼まれたら「そんな勝手な事を言うような国は滅ぼしてやる」と豪語し、弟エギエディルス皇子の愚行を莉奈に詫びる。さらに外交問題として「聖女召喚の儀式を行った」という事実が他国に広まる危険を考慮し、莉奈の事は「異世界から迷い込んだ者」として王宮に保護している。

 食べる事と酒が好きなので、莉奈が生み出す食事やカクテルを気に入っている。甘い物は嫌い。

リック=ハーネット

 料理長。莉奈の身の回りの世話をしているラナ女官長の夫。

 莉奈の生み出す料理に驚きながらも謙虚に学び、部下たちと共に技術を習得してゆく。投げっぱなし、やりっぱなし気質である莉奈の代わりに指導も行い、王宮以外の厨房から学びに来た料理人たちにも丁寧な対応をしている。

 莉奈の新作料理に最も接する機会を持っている立場だが、試作品として出される皿の数は少ない。そういう時に料理長の権力を誇示せず、莉奈に教えられたジャンケンで公平に部下たちと戦う良い上司だが、妻のおねだりには勝てず、希少な一品を夫婦で分け合って食べる事が多い。

見どころ – 好きなシーン

 莉奈が自分を鑑定するところ

 この世界には7つの魔法(基本は火水風土、さらに光闇と聖)が存在する。魔法を使える者は50~100人に1人であり、魔法属性が多い者ほど希少。

 莉奈の魔法属性は火水風土、技能スキルは鑑定その他。魔法属性が4つあるのは珍しく、鑑定があるのも素晴らしいが、莉奈の能力は「食べ物」にのみ大きな優位性をもっており(自動黄金比料理作成、食べ物の名称や状態確認など)、普通に使うとあまり役に立たない。

 そうした莉奈が自分を鑑定すると、能力と共に「状態:いたって健康…だが、太りぎみ」などと出る。日々をすごして少し痩せた頃に鑑定すると「状態:いたって健康…だが、まだぽっちゃり」と厳しい。そこが面白くて好き。莉奈の「状態」鑑定がいつか「いたって健康…魅惑のスタイル」ぐらいまで進化してくれるのだろうかと、そこも期待している。

 トイレも貴族仕様は便座に「浄化魔法」がかかっているが、庶民のトイレは便器の下にスライムが居て、排泄物を消化してくれる。ゴミもゴミ箱の底にスライムが居て始末する。このスライムは「核」とされる心臓の無いゴミ処理用スライムとして人工培養された物となっている。竜との契約の事もあり、ヴァルタール皇国の技術部は魔物研究も素晴らしく、とても興味深い。

見どころ – 関係性、ここに注目!

 竜と王族と莉奈の関係。

 王宮は山の上にあり、名称は「銀海宮」、莉奈の暮らす離宮は「碧月宮」、竜は軍部「白竜宮」にいる。「白竜宮」の隣には宿舎があり、その前の平地に竜が降り立ち、平地の先に竜の宿舎がある。竜の宿舎の先は高い崖になっており、竜が好きに行き来できるようになっている。

 竜には上位と下位があり、黒>白>紫>蒼>緑>黄となっている。野生や瘴気に毒されて闇落ちした竜は「魔竜」と呼ばれ、灰>赤>茶で、色によって強さが変わる。

 他国では「魔物」扱いされて敵対している竜だが、ヴァルタール皇国では「竜が人を選び信頼関係を結ぶ」事により、竜に選ばれた者が「竜騎士」となり世界最強の部隊を作り上げている。竜に選ばれる基準は判明しておらず、一目で友となる者も居れば、一年をかけて信頼を結ぶ者も居る。王宮に勤める武官は「白竜宮」を訪れ、竜と信頼を結ぶように努め、竜騎士となった者はすべからく竜騎士団に所属する事になるが、必要時以外は各自の所属に勤務している。

 フェリクスは竜たちを束ねる黒の竜王と契約しており、シュゼルは白の竜と契約している。エギエディルスにはまだ相手が居らず、その事をコンプレックスに思っている。

 フェリクスに連れられ、エギエディルスと共に「白竜宮」を訪れた莉奈は竜王と対面。その姿の良さを褒め称えると竜王に気に入られ、遠巻きに見物していた近衛兵や軍人たちが驚くほど仲良くなってしまうが、竜王に名前が無い事を不満に思ってしまう。

 そうした先でシュゼルと契約している白竜とも対面し、七色に輝く鱗の美しさに見惚れ思わず「真珠姫とか付けたら絶対可愛いのに…」と呟いてしまうと、白竜が気に入ってしまい、莉奈は皇子の竜に勝手に名前を付けてしまうという暴挙を行ってしまった。

 この結果に対し、皇子たちは驚きながらも竜の意思を尊重する形で莉奈を罰する事は無かったが、見物人たちの間では王族と親しく話し、竜に気に入られ、命名まで許されてしまった莉奈の立場が変化してゆく。

 竜を素材として狩り殺す者は居るが、肉食の為に殺す人間は居ない。それが竜と人間の常識であったが、現代書物の中で「竜の肉」は定番の美味とされている事から、なにげなく莉奈が「竜の肉って美味しいのかな?」と呟いた。黒と白の竜は後ずさり、エギエディルスは絶叫、国王さえも呆れ、見物人たちが青ざめた一言は尾を引き、竜王たちから「竜食らいの娘」と呼ばれるようになるのだった。

 ぜひ、読んで楽しんでみてくださいね!