『田中家、転生する。』~ あらすじ・キャラ・見どころ紹介!

本作『田中家、転生する。』は、
漫画:加藤ミチル先生、原作:猪口先生、キャラクターデザイン:kaworu先生による異世界転生漫画です。

あらすじ

 猫を愛する田中家は、一家団欒中に地震によって被災し、全滅する。

 長女・港は、己の死を確信して意識を手放したが、次に目覚めた時にはスチュワート伯爵家長女・エマになっていた。驚き、混乱するエマの部屋へと弟のウィリアムが訪れ、彼もまた同じ転生者だと知ったエマは、家族が揃った食事時に全員の記憶を確かめ、一家揃って転生した事を知る。

 オタクな弟。軽いオタクな姉。漫画好きの長兄。輪廻転生をなんとなく理解している両親たちと話し合い、この世界がゲームや漫画の世界ではないかと考察するが思い当たる記憶は無く、とりあえず何か気付くまではこのまま生活してゆこうということに。

 そこで母のメルサが「結婚だ!孫を抱かせろ!」と吠えた。前世では全員が三十代独身であった事から母の意向に逆らえず、お茶会という名目の見合いが開催されるが、子供たちにとって十代の少年少女は恋愛対象にならず、このお茶会をきっかけに知り合う事になった王の側室ローズの美貌に惚れこみ、ファンになって貢ぎ始める。

 その結果としてローズの長男である第二王子エドワードと接近する事になり、エドワードの心はエマに傾いて行くが、ローズの屋敷を訪れている時に局地的結界ハザードが起こり、小さな穴から漏れ出したスライムによってエマは瀕死の大怪我を負ってしまい…!?

 

登場人物紹介

エマ

 スチュワート伯爵家長女。11歳。前世は田中港35歳OL。軽めのオタク。虫が大好きで研究もしている。

 エマは虫大好き少女で人に興味を持たなかったが、港の記憶を思い出した事で対人関係が良好になる。しかし二人の性格が混じり合った事で奇行はより強まり、周囲を顧みない行動がトラブルを増やしている。

 エマはスチュワート伯爵家の主産業である養蚕を助けるため、「エマ小屋」と呼ばれる虫の飼育部屋を作った。そこには糸を吐く虫を中心に近隣で捕まえた虫を飼育しており、王立大学で学んでいる叔父から送られてくる研究結果を土台に改良実験をしている。虫に関してだけは天才的なエマは、実験の結果、巨大蚕を生み出した。その量と質を兼ね揃えた上質な絹は、スチュワート伯爵家の資産を格段に上げ、最高級品として王家にも献上されるようになっている。

 しかし、エマが庭で採取した松茸に似たキノコを食事に混ぜた事で、スチュワート伯爵家は食中毒を起こしたり(この事件で家族全員が前世の事を思い出している)、亡き愛猫の声が聞こえるからと夜中に飛び出した先で、野盗と戦った果てに転生していた愛猫四匹を連れ帰ったり、王の側室であるローズの美貌に惚れこみ、特級品の絹ドレスを大量に送って癒着を疑われたり、局地的結界ハザードでこぼれ出たスライムと対峙した時、跡継ぎである長兄ゲオルグの命を優先した事で右半身を溶かされて生死の境をさまよう重傷を負ったりとトラブルは絶えず、エマを溺愛する家族を振り回している。

 推し猫は三毛猫のコーメイさん。ヴァイオレットと名付けた大きな蜘蛛も可愛がっている。

ウィリアム

 スチュワート伯爵家次男。9歳。前世は田中平太33歳コンビニアルバイト。愛称ぺぇ太。オタクで美少女大好き。

 兄と姉はお見合い相手の少年少女を子供としか見ていないが、ウィリアムは美少女大好きなので積極的。兄と姉に軽蔑されても平気。

 頭が良く、知識が豊富。武勇の兄、家業を発展させる姉、家族の知恵袋として活躍する弟という立場。姉の突発的行動に振り回されながらも、使い走りから後始末までこなす有能さ。

 武勇を得意とする兄の知識的補佐をしているウィリアムは、結界の弱くなった部分から入って来るようになった魔物の多様化に頭を痛めている。結界を張る希少な魔法使いはもう三十年も出ていないため、結界に接する辺境を領地とするスチュワート伯爵家は、狩人を増やして対応しているが状況は悪くなってゆくばかり。

 推し猫は三毛猫のリューちゃん。

ゲオルグ

 スチュワート伯爵家長男。15歳。前世は田中航38歳土建屋。漫画好き。

 魔物狩りの修行中。魔物は切って捨てれば良い生き物ではない。毒を散らす物もいれば、切る事で増えて被害を増す物も居る。死体すら適切な処理をしなければ死者を出す。辺境の領地を治める領主には、多様化した魔物を倒す力と知識が必要であり、それを持たない者は領主の資格を得られない。

 ゲオルグは武勇に優れているが勉強は苦手で、弟ウィリアムの知識に頼りがちな所がある。しかしそれを己の無力とせず、頼りになる妹や弟が居てくれて嬉しいと明るく笑い、日々努力して前に進む力を持っている。妹弟も次期領主として魔物狩りの修行をする兄を尊敬し、支える事を当然と考えている。

 明るく元気で強い兄は他家の子供にも人気があり、母の野望を叶える第一候補としても頑張っている。

 推し猫は黒猫のかんちゃん。

ローズ・アリシア・ロイヤル

 王の側室。バレリー侯爵家令嬢。三十歳を過ぎても美貌と巨乳を保持している最高級美女だが、本人は寄る年波に怯え、必要以上の宝飾やドレスで身を飾り王への愛情を示すが、王からは距離を置かれ、周りからは無駄遣いが過ぎる年増女と噂されていた。

 彼女が若く美しい側室であった頃、王も周りもその美貌を褒め称えたが、エドワード第二王子が生まれた事で注目は王子に集まり、続いてヤドヴィガ姫も生まれた。二人は王族特有の黒髪を持って生まれ、何処に行っても子供たちだけが注目されるようになり、彼女を褒める者は居なくなった。

 ローズは子供たちを愛している。けれど子供たちばかりが注目されて愛され、添え物となる自分を受け入れられず冷たく当たってしまう。そうした母親の態度は子供たちにも伝わり、長男エドワードは派手に着飾る母親を嫌悪し、妹のヤドヴィガも怯えて近寄らなくなっていた。

 しかしエマたち三兄弟がローズの美貌に一目惚れし、その美しさを褒め称えて絶賛するだけに留まらず、自国領で生産している最高級絹を使ったドレスを貢ぎ、推しに惜しみない散財と心酔を捧げた結果、自尊心は大いに潤い、子供たちへの嫉妬は消え失せて仲直りする事が出来た。

 さらに王から疎遠にされていた理由も王兄を警戒していたからだと聞き及び、ローズの悲しみは癒えた。

ヨシュア・ロートシルト

 14歳。そばかすがコンプレックス。ダニエルは「パレス」で商いをする為に息子を連れて領主へ挨拶に行き、そこでヨシュア(8歳)はエマに出会って一目惚れした。

 辺境を守る貴族は危険が大きく収益は少ないため、スチュワート伯爵家も貧乏を極め、ダニエルが挨拶に行った時も領主レオナルドが使用人のウェディングドレスを手縫いしていた。しかし、その手の中で編み出されているレースはそれだけで大金を稼げる物であり、ドレス用の布としてソファに掛けられていた絹織物も一級品。これだけの物を生み出せるのに何故貧乏なのか全く分からず混乱したダニエルだったが、好機を見逃さない商人魂が燃え上がり、取引を申し出るとあっさり了承される。以後、スチュワート伯爵家はロートシルト商会と手を組むという形の丸投げで盛り返してゆく。

 ヨシュアは父の仕事を良く学び、誕生日ごとに店を一つ任される手腕を見せる。全ては家の為に、スチュワート伯爵家の為に、エマの為に、ヨシュアは商人として成長してゆき、父が男爵位を手に入れた事で三兄弟と共に学園へ入学する。

 コンプレックスのそばかすも、エマに「虫みたいで可愛い」と言われて愛着を感じるようになった。べた惚れである。兄弟とも仲が良い。

見どころ – 好きなシーン

 ローズ家を訪れている時に局地的結界ハザードが発生し、スライム三匹に苦戦する場面

 スライムには仕留めきれなかった相手を「自分の獲物」と認識し、殺すまで追う習性がある。そうして追っ手となったスライムを剣で切れば分裂し、さらに切り付ければ分かれる。果てなく分裂したどれかに核があり、核を壊さない限りスライムたちは獲物を追って被害を大きくしてゆく。スライムは安易に殺せる魔物ではない、という扱いがとても良い。同時に、スライム一匹でさえ専門知識が無ければ討伐に苦戦する状況で、結界が弱くなっている辺境防衛を地方貴族に丸投げしている無知の上に成り立つ平穏が危うい(勉強家を自負している第二王子エドワードはスライムの倒し方すらも知らなかった)。

 さらに辺境貴族は魔物を狩る為の「狩人」を持つ事は許されているが「軍隊」を持つ事は許されていない。軍隊を持てるのは王と四公貴族のみで、これは反乱を防ぐ為のものという事だが、四公しか軍隊を持っていなくても国が成り立っているという状態こそが、外に敵無しを意味するのか、よほど辺境にある国なのか、結界が強すぎて他国が進軍できないのか、色々と考えさせられる。

見どころ – 関係性、ここに注目!

 田中家と猫たち

 三毛猫のコーメイさん(田中諸葛孔明)は生まれてまもなく、母親から「先祖が田中一家に大恩がある」と教えられた。だから自分たちは代々田中家の周囲を縄張りとして平和を守っている。そして稀に霊力の強い猫が生まれると田中家の飼い猫として力を役立てている。

 コーメイは霊力が強かったので田中家の飼い猫になり、霊感の強い港を邪悪な物たちから守っていた。港もコーメイを愛し、彼女たちは相愛で育った。

 コーメイは仔を生み、リューちゃん(劉備)と名付けられた。子に霊力を与えたコーメイの寿命は尽き、彼女は田中家を去った。港の涙に見送られたコーメイは必ず帰る事を誓い、田中家を追って異世界転生を叶える。

 孔明、その娘劉備、劉備の息子関羽と張飛。四匹の猫は11歳のエマが乗れるほどの巨体で生まれ、エマを呼んだ。亡き愛猫の声を聞いたエマは飛び起き、夜道を駆けてコーメイを探し、四匹と出会って屋敷へ連れ帰る。彼女たちは異世界でも田中家を守り、共に生きます。

 ぜひ、読んで楽しんでみてくださいね!