本作『主人公じゃない!』は、
漫画:メイジ先生、原作:ウスバー先生、キャラクター原案:天野英先生による異世界転生漫画です。
目次
あらすじ
残業帰り、車に轢かれそうになった少女を助けて死亡した青年は、気が付けば学生の頃にやりこんだRPGゲーム「ブレイブ&ブレイド」通称ブレブレのキャラクター「孤高の冒険者レクス・トーレン」に生まれ変わり、洞窟の中でゴブリンを斬り殺していた。
驚きながらも状況を確認し、ゲームの記憶と照らし合わせれば、現在地はレクスの故郷「大都市アース」近くのダンジョン「試しの洞窟」である事が分かる。反射的に魔物が行き交うダンジョンから出ようと考えるが、そこで「試しの洞窟」を訪れた主人公パーティが封印された扉を開いてしまい、彼らをレクスが助ける事でオープニングイベントが発動する事を思い出し、慌てて止めに行ったが、彼らは「主人公」ではなかったようで封印された扉は開かれなかった。
安堵したレクスは少年たちを護衛してダンジョンを出るが、何故か「大都市アース」が魔物に襲われるオープニングイベントが発動していた。
マルチシナリオ、マルチエンディング、ヒストリージャンクションシステムを踏み越え「救済の女神」が定めた二年の間に「主人公」が「悪神ラースルフィ」を倒さなければ世界が消滅する、それが「ブレイブ&ブレイド」の物語。
だからこそ「主人公ではない」レクスは「主人公」に世界の命運を任せ、自分は隠遁生活を始めてもいいのではないかと考えるが、「序盤お助けキャラ・レクス・トーレン」もまた「主人公」たちが一定のイベントをこなした先でパーティを離脱、その後は故郷アースで死亡するという設定がある事から、神が与えた二年間を生き残る為に動き出す。
登場人物紹介
レクス・トーレン
A級冒険者で、妹はレシリア。前世は、仕事帰りに少女を助けて車に轢かれ死亡した青年。最後に「もう一度ブレブレやりたかったなぁ」という思いに、天の声が「その願い聞き届けたり」と応え、気が付けば学生の頃にやり込んでいたRPG「ブレイブ&ブレイド」通称ブレブレのキャラクター「レクス」に生まれ変わっていた。
序盤お助けキャラである「レクス」は、レベルこそ高いものの器用貧乏で将来性皆無。途中離脱からの死亡イベント不遇キャラである事から「どうしてレクスなんだ!」と嘆いてしまったが、どうにもならない。
物語は進み、強制イベントからは逃れられない運命を悟ったレクスは、救済の女神が定めた二年の間を生き延びる強さを求め、主人公を探して状況を探り、現実となったゲームの中で何が出来るのかを確かめ、戦力の充実を計画する。
レシリア・トーレン
鮮やかな碧色の髪。兄はレクス。
大都市「アース」が魔物に襲撃された時、兄を探して「試しの洞窟」に向かうも、途中でガーゴイルに襲われて倒れてしまう。ゲームシナリオ的にはこの時点で死亡するのだが、レクスの救助が間に合い、意識不明のまま少年冒険者たちと一緒に逃走する。
そして道中の困難をかろうじてしのぎ、自由と闘争の街「フリーレア」に到着後目を覚まし、兄が兄ではない事を察知。追及の果てに、中身が別人に入れ替わっている事を知る。
兄と名乗っている者の事情を全て聞き及んだレシリアは、「兄の体を守る」為に同行を申し出るが、遠い昔に離れてしまっていた兄との思い出は薄く、兄ではない兄との生活が楽しくなってゆく。
オープニングイベントで死亡するはずだったレシリアの能力は、運営の適当さで破格なものとなっており、とても強い。初期値が剣士系の上位職「インペリアルソード」の最低値となっている。
ラッド
ブレイブレオ。(ブレイブレオとは、特定のアイテムを装備し、装備制限を満たした事によって「ヤングレオ(若き獅子)」から進化する剣士系上位職。一次職「ファイター」二次職「ソードマン」三次職「インペリアルソード」四次職「ブレイブレオ」となる。)
アークメイジのニューク、カーディナルのマナ、ボウマスターのプラナの4人パーティ「ブレイブブレイド」の前衛。
「試しの洞窟」でいきなり声をかけてきたレクスに不信感を持ち、A級冒険者とは名ばかりのペテン師ではないのかと疑っていたが、大都市「アース」が魔物に襲撃され、負傷したレクスの妹と共に逃走する中でレクスの強さに惚れ込み、憧れを抱く。
自由と闘争の街「フリーレア」に到着してからは、パーティ全員がレクスの指導を受けるようになり、新人冒険者としては破格の強さを手に入れる。知り合いには「俺の師匠だ!」と自慢しているけれど、本人を前にすると素直になれず、今も「おっさん」と呼んでいる。
ヴェルテラン
A級冒険者。自由と闘争の街「フリーレア」の筆頭冒険者で、「不死身のヴェルテラン」の二つ名を持っている。新人冒険者が無茶をして死なないようにと冒険者ギルドで講習会を開き、成長指針や戦闘方法などを話していた。
しかしレクスたちが町を訪れ、彼が幼い新人冒険者に無意味な指導をした果てに中級冒険者が行くダンジョンへ追いやる様子を見て激怒。レクスを止めようと敵対するも惨敗。さらにレクスが育てたラッドたちがダンジョンを攻略した結果からレクスの指導が正しい事を認め、自分の考え方が間違っていた事を公然の場で謝罪した。
その後ヴェルテランは冒険者を引退。自分の過ちを償う為、さらにレクスの指導を多くの人に広めて冒険者たちを生き残らせる為、フリーレアの冒険者ギルドマスターになる。
サーキュラ
人の生気を吸って生きる悪魔。魅力的な美人。
カジノ「グランリリム」はサーキュラの魔力で全て作り上げられたカジノ。希少金属で作られた高額トークン(賭けに使うコイン)を生成するのにも、それなりの魔力をもってゆかれる仕様であるからこそ、「魅せ商品」として提示した「景品」を生成されてしまえば魔力が枯渇して死ぬ。
カジノには定められた決まりがあり、客にギャンブルを止めさせる事は出来ない。しかしサーキュラが悪魔の姿を現し、客が襲い掛かって来れば撃退できる。
サーキュラは本性を現して威嚇するが、ゲーム仕様で全てを理解しているレクスには通じず、それどころかサーキュラの魔力残量を測る指針にした果てにイカサマの限りを尽くし、数百年の時を生きた大悪魔の生涯を終わらせた。レアアイテム大量ゲットだぜ。
見どころ – 好きなシーン
オープニングイベントとの戦いです。
「試しの洞窟」に新米冒険者たちと「レクス」が同時に存在し、封印の扉が開かれて戦闘、結果として大都市「アース」が滅ぶオープニングイベントが発動するのではなく、ゲーム仕様で「出自」が選べる事から「主人公」が「試しの洞窟」に行くパーティに存在しない場合は、別の場所で別のイベントがあり、条件を満たせば「大都市アース陥落イベント」が発動する。何故ならば「大都市アース」が魔物に襲われる事で世界崩壊イベントスタートとなるからだ。
この世界の摂理から逃れる事は出来ない。けれど兄を助ける為に「試しの洞窟」へ向かい、ガーゴイルに殺されるはずだった妹レシリアを助ける事は出来た。定められた運命には変える事が「できるもの」と「できないもの」がある。
ゲームならば「大都市アース」からの逃走ルートは二つ。東の「リクシア」に向かえばガーゴイルたちの待ち伏せに遭い、主人公以外の新米冒険者たちが全滅。北の「ウミナ」に向かえばドゥームデーモン(レベル60)の魔物が現れ、新米冒険者たちを庇ったレクスが殺されてしまう。
レクスとして生まれ変わった主人公は追い詰められた結果どちらも選ばず、第三の道である本来ならばゲーム終盤に使用できるようになるショートカットルートを逆走する事で自由と闘争の街「フリーレア」へ向かうも、街を目前にしてドゥームデーモンに行く手を遮られる。
ドゥームデーモンとの戦闘は「レクスが死亡」する事により、街から応援が来て新米冒険者たちが助かる、というものだがレクスは死にたくない。レクスはアイテムを使って一度死亡し、街から応援が来るという「イベント終了」の状態に持って行った先で復活。ドゥームデーモンを倒して生き残る。
ゲームならばほんの少しの段差も、崖も「定められた法則」で行く事を許されないが、現実となったゲームでは身体能力の許す限りの道を選ぶ事が許され、しかし神の決めた「物語」からは逃れられない。この、絶妙なバランスでオープニングイベントを走破しきった主人公がすごくよかった。
イベントボスがドゥームデーモンであった事も、神がレクスの心情「子供たちを殺したくない」を汲み「レクスが生き残る為のアイテムを事前に用意」してくれたようにも見える。
定められた運命から逃れる事は出来ないが、立ち向かい、撃破する事は出来る。レクスは物語の途中で死ぬ運命にあるが、これもどうやって乗り越えるのか楽しみだ。
見どころ – 関係性、ここに注目!
トーレン兄妹です。
アース王国とは「救済の女神」と共に悪神を封じたアース王家の末裔が治めている国であり、王族は古都「アース」にある城で穏やかに暮らしていた。トーレン家は代々アース王家に仕えてきた家系であり、王族の護衛や武術の指南役などをしてきた。
そうした家から兄レクスは突然出奔。その後、妹であるレシリアが家を継ぎ、第二王子の護衛となるはずだったが、魔物の襲来により王族、そしてレシリアも死亡。それが物語の流れであったが、レクスの救助が間に合いレシリアは生存。さらにゲーム展開的に第二王子も生存している。
アース王家唯一の生き残りにして、女神への復讐を誓う闇のしもべ、のちに「常闇の教団」を率いて主人公たちの前に何度も立ちはだかり、世界を破滅へ導こうとする最凶の魔法使い「闇の王子」はアース王家第二王子を名乗っている。
主人公パーティの「序盤お助けキャラ」であるレクスは物語の途中でパーティを離脱、その後「アース」の街で死亡する。ゲームでは死んでいるはずの妹レシリアが壊れスキルで生存し「兄の体を守る」という名目でレクスに付き添い護衛している状態でも物語は進み、イベントは訪れるだろう。三人の運命が交差する日が待ち遠しい。
ぜひ、読んで楽しんでみてくださいね!