本作『戦国小町苦労譚』は、
漫画:沢田一先生、原作:夾竹桃先生・平沢下戸先生による異世界転生漫画です。
目次
あらすじ
学校帰りの道で突然、綾小路静子は戦国時代にタイムスリップしてしまう。静子は野盗に襲われ、窮地に。すると兵士が駆け付けて討伐してくれる。
彼らを引き連れていた武将に「何者か」と尋ねられた静子は、肩衣の家紋、腰に佩いた義元左文字から、その武将が織田信長であると確信し、その本名を口にしてしまう。戦国時代、武将の本名を口にすれば無礼討は当然。下馬した信長に刀を向けられた静子は平服し、自分が日本生まれの南蛮育ちで、最新の農業技術を知っている事から、自分が役立つ事を進言し、命乞いをする。
信長は静子の言葉に興味を持って受け入れ家臣にする。静子の言葉を証明させる為に、数年に渡り年貢を収められなかった村へと静子を連れて行き、村長に据える。そして翌年に成果が出せなかったら全員処刑すると告げる。
静子と村人たちは団結して農業に挑み、成果を出す。信長は喜び、さらなる成果を求め、静子が応える。そうした月日を重ねてゆく先で、信長の庇護を受けた静子は、農業だけではなくあらゆる分野に手を広げ、信長に強大な富と武力を与える事になるのだった…!
登場人物紹介
綾小路静子
学校帰りに戦国時代へタイムスリップしてしまった、戦国歴史好きの女子農業高校生。
荷物の中に、農業を営んでいる祖父から預かっていた苗や種、さらにミリタリーマニアの姉に本屋から受け取りを頼まれて持っていた古代から現代までの武器マニュアル本、戦国時代に行けたら何をするか妄想をたっぷりと書いたノート、その為に必要な情報を落とし込んでおいたスマホなど、多くの情報を抱えている上に、本人の持つ知識が膨大であった事から、信長に与えられた難しい命令にも応える事が出来た。
そして信長の信頼を得て命の保証を確たるものとする為、信長に必要である物を選び、同時に自分の夢も重ねて農業以外の分野にも手を出して次々と成功を収めてゆく。信長の信頼が厚くなれば織田家家臣の風当たりが強くなるが、彼らと共存する為に知恵を絞ればそれがまた富と力をもたらすことに。
信長の宝となった静子は地位を投げ捨てる事も出来ず、人を与えられ、彼らを守り食べさせる為に歩み続けた先で武具を着て、兵を指揮し、死地に追いやる場所まで行ってしまう。
織田信長(織田上総介平朝臣信長)
尾張国戦国大名。天下布武を目指している。
静子を手に入れた信長は、あらゆる方面の富を手に入れる事になるが、最も大きなものは情報と思考変化だった。静子が持っていた詳細な日本国地図。彼女が語る他国武将の情報。特に武田信玄の病気情報は値千金の価値をもっていたが、それ以上に彼女や彼女の知る異国偉人たちの思想が、信長の行動決定に大きな変化をもたらしている。
信長は自分が志半ばで倒れる事を知らない。しかし「静子」という異端を手に入れた事で、歴史は変化の可能性を秘めている。信長は老婆から「剣」が「刻の落胤」を運ぶと聞き、さらに「己の役目を果たせ」とも言われている。老婆は何者なのか、静子は「剣」が足満、「刻の落胤」は自分とみつおの事だと考えているが、戦国時代にタイムスリップしたみつおは「鞘」を手にしていた。
未来から来た静子達が知る歴史を信長は歩んでいる。些細な変化は大きな流れに飲み込まれる形で終焉を迎えるのか、己の最後を知らない信長は天下布武を目指して進む。
足満(足利左近衛中将参議従三位征夷大将軍源朝臣義輝)
幼い静子が暮らす世界にタイムスリップしてきた男。刀を手に血だらけで山中に倒れていた。生死をさ迷い目覚めると記憶喪失だと語り、静子宅で暮らしながら現代と過去の知識を手に入れていった。武器と戦闘分野は静子よりも知識がある。
静子がタイムスリップした同時期に戦国時代へ帰る。何も持たず、素性も分からない自分を助けて慈しんでくれた綾小路家に恩義を感じており、静子と再会してからは静子の為だけに生きて死ぬと決め、あらゆる裏表の仕事を冷淡にこなしている。
足満の身分は「室町幕府第13代征夷大将軍足利義輝」であり、政敵に追い込まれた先でタイムスリップしたと思われる。戦国時代では死人扱いになっているが、政治に関わるうちに旧知と会い、友情を温めたり、敵を脅したりしている。
本多忠勝平八郎
徳川家家臣。落馬から山中に迷い込み、織田家秘蔵の「椎茸栽培所」に紛れ込んで捕縛されてしまう。徳川家と遺恨を残したくない信長の判断で解放されるが、椎茸栽培所で出会った静子に一目惚れしてしまい、事あるごとに求愛しているが報われない。
静子へ求婚する時に持って行った綿花の花がきっかけとなり、織田家と徳川家の代表として二人で共同綿花栽培を行う事になる。
ヴィットマン
ハイイロオオカミの雄。鹿狩りの後処理をしていた静子の前に現れたが、空腹で倒れてしまう。見捨てる事が出来ずに鹿肉を与えると元気になって懐き、共に生活するようになる。
後に妻を迎えて子供が生まれ、バルティ、アーデルハイト、カイザー、ケーニッヒ、リッター、ルッツという大家族になる。
静子の優秀な護衛であり、癒し。
見どころ – 好きなシーン
宇佐山城に出た森可成の幽霊。
連合軍との戦闘により負傷した森可成は、生死の境を越えて生き残る。しかし戦えない身で表に出るのは危険だと判断した信長は、敵の油断を誘う為に森可成の葬式をして死を偽装した。息子の涙、兵士の怒り、間者たちの報告によって森可成の死は知れ渡る。
数日後、信長は和議の場を設ける為に、宇佐山城へ延暦寺の高僧を招く。そして武家の戦に関わらず中立の立場を取るようにと脅しをかけるが、織田家弱体を言っている高僧たちは薄ら笑いで払い除ける。
そこに、矢を受けた武者姿の森可成が現れた。高僧たちは驚き怯えて腰を抜かしてしまうが、信長は見えていないかのように平然としている。その間にも森可成の幽霊は恨み尽き果てぬ目で睨み付けながら高僧たちへと近寄り、伸ばそうとした半腐りの腕がぼとりと目の前に落ちた所で高僧たちは悲鳴を上げて逃げ帰った。
高僧たちが居なくなった部屋で信長と森可成は声を立てて笑い合い、幽霊演出の煙を炊いていた静子も笑った。
その後、息子である森長可に真実を話し、親子は涙の再開を果たす。
見どころ – 関係性、ここに注目!
田中みつお&鶴姫
静子、足満と共にタイムスリップしてしまった中年男みつお。織田家に隠されていた静子と再会した後は、織田家で畜産業をする事が決まり、静子の依頼で琉球在来豚を原種としたアグーを確保する為、出入り商人の久治郎と共に旅立つ。そしてアグー豚と共に島津家の鶴姫(八歳)を嫁として連れ帰った。
島津家と織田家に繋がりは無いが、織田家家臣という立場で他家の姫を勝手に貰い受けるわけにはいかないし、鶴姫には間者の疑いもある。そうした事から鶴姫には家に帰ってもらうのが最良なのだが、鶴姫はみつおにべた惚れで「絶対に帰らないし実家と対立したら戦う」と約束したので、隔離して様子を見る事になった。
織田家の宝である静子と仕事を共にするみつおは、孫ほど歳の離れた鶴姫の愛情に戸惑いながらも細やかな気配りで庇護し、穏やかに愛情を育ててゆく。
ぜひ、読んで楽しんでみてくださいね!