本作『ティアムーン帝国物語 ~断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー~』は、
漫画:杜乃ミズ先生、原作:餅月望先生、キャラクター原案:Gilse先生による異世界転生漫画です。
目次
あらすじ
ティアムーン帝国皇女ミーアは我儘三昧の末、帝国を貧困に導く事になり、二十歳で処刑されることになった。断頭台に跪き、ギロチンが首を落とす感触を覚えた刹那、悪夢を見たように目を覚ます。
繋がっている首、見慣れた天蓋と寝室、そして小さな自分の手。確かめるように姿見を覗けば、なんとそこに居たのは十二歳のミーアの姿だった。ふと視線を下ろせば、ベッドに置かれた一冊の日記。血塗られたページには、ミーアが綴ったであろう処刑までの悲痛な心情がつらづらと書き込まれていた。
綺麗なドレスに豪華な食事は、牢獄で過ごした数年間から見ると雲泥の差であることを実感したミーア。周りを見れば、時間が巻き戻った事を体現するかのように、クビにした給仕や使用人が宮殿で働いている。ミーアはかつて自分が行った悪行を思い出し、日々の恵まれた環境に感謝をして悔い改める――――のではなく、将来また処刑されない為にも横柄な態度を変え、表面上は臣下に優しく接するのだった。あくまでも自分が処刑されない為に。
その為に出来る事は惜しみなく全力で先回りして、不安の種は潰していく――これがミーアの出した結論だった。節制、奉仕、慈愛、全てが打算で自分本位のミーアなのだが、次第に周囲は勘違いを孕みミーアを「帝国の叡智」だと担ぎ上げていく。知らぬ間に名声というビッグウェーブに乗ったミーアはやがて、自身を処刑したメンバーが揃うセントノエル学園へ通う事になるのだが、そこでもミーアへの勘違いは常軌を逸していき信仰される始末。
自覚のないミーアの周辺で繰り広げられるすれ違いと勘違い、将来襲ってくるであろう帝国を含めた全土を覆う規模の大飢餓。謎の敵「混沌の蛇」の存在。自分も知り得ない事態を前にして、果たしてミーアは処刑を免れることができるのだろうか…。
登場人物紹介
ミーア
ティアムーン帝国皇女ミーア・ルーナ・ティアムーンは世間知らずで贅沢三昧、その上、我儘で傲慢な姫だったが故に二十歳で処刑されてしまいます。
十二歳に逆行したことで生前の失敗をやり直すのですが、処刑寸前まで親身に世話をしてくれたメイドのアンヌ、口煩い税務官のルードヴィッヒ、この二人を臣下として従えた事で、瞬く間に順調なスタートを切ります。
本人の性格は至ってシンプル。小心者で平凡な発想、精神年齢二十歳なのに恋愛下手でお姉さん振る仕草。そして基本的には何も考えておらず、周囲の勘違いによる持ち上げだけで難関を突破する圧倒的幸運の持ち主です。
しかし、未来に起きる事柄を知っている事でその事前対処に走る姿は、普段のおバカな姫様から一転したカッコいいものですが、本心ではやはり自分の処刑エンドの粉砕の為の努力というところがミーアの一貫する魅力だと思います。
また、漫画では本音と建前を表現した顔芸が面白おかしくとも可愛らしいもので、ギャグテイストとうまく合わさった作品となっています。
アンヌ
アンヌは、ドジっ子新人メイドのツインテールの少女です。処刑されるミーアの身の回りの世話を率先して務めており、病で亡くなった妹が執筆した恋愛小説を聞かせていました。
そんな忠義を尽くしてくれたアンヌと再会したミーアは、彼女を専属メイドに抱え、晴れてアンヌへの忠義を返す事ができます。
ミーアは、アンヌの為に何不自由ない給金と皇女の庇護下という体面も与えるのですが、勿論この時代のアンヌはその理由がわからないので困惑します。なので、ミーアの期待に応えるべく、メイド業務から多方面の学問、更には馬術を習う事で、どこまでもミーアのピンチに馳せ参じられるよう努力していきます。
ミーアとの関係性は、臣下であり姉妹のようでもあります。入浴時には互いに体を洗い合いしたり、主従関係を無視して同じ部屋のベッドで眠ったりと、二人のほのぼのとした空気感は作中の癒しとなっています。
また、恋愛経験のないミーアの恋の相談役としてアンヌはなぜか羨望されており、本人も恋愛経験がないにも関わらずミーアよりはまともなアプローチの提案するなどして、プライベートな部分でも支えている存在です。
ルードヴィッヒ
ティアムーン帝国の財務官の一人を務める若き天才・ルードヴィッヒ。少々頭が固く、財政問題に関しては誰に対しても口煩いですが、平民の出自故に、上層部には意見が通らない事を苦悩にしていました。
しかし、絶賛人生やり直し中のミーアは、ルードヴィッヒの有能ぶりを理解しているので、財政難の克服に際して彼を味方に引き込みます。その手段が、ルードヴィッヒに再三言われていた知識と小言。彼への腹いせも織り交ぜて、それを本人に得意気に話すといったものでした。勿論、天才ルードヴィッヒ発案の政策案を述べただけなのでその内容は完璧なものでしたが、この時代のルードヴィッヒがそれを知る由もなく、ミーアを天才だと妄信する一端となりました。
それからというもの、ルードヴィッヒは実はおバカなミーアの発言の裏の裏を深読みし曲解。それが功を奏してミーアの手柄となり、ミーアの「帝国の叡智」伝説に尾びれがついていきます。
また、ルードヴィッヒはミーアからは「陰険メガネ」と心の中で呼ばれていますが、本人は知り得ません。
シオン
帝国と並ぶ大国、サンクランド王国の第一王子シオン・ソール・サンクランドは、高い剣技の実力と聡明な頭脳を併せ持つ、金髪サラサラヘアーのさわやかイケメンです。シオンの信条は公平な判断であり、「天秤王」と揶揄されるほどに融通の利かない頑固な一面があります。
我儘で自分本位なミーアのアプローチに見向きもせず、帝国の内乱時にはミーア処刑の一翼を担いました。
ミーアの転生後は、帝国の叡智の噂と臣民を助けたミーアの雄姿に好印象を抱き、シオンもまた聡明な筈の目が曇っていき、ミーア信仰の一人になってしまいます。
ラフィーナ
セントノエル学園がある聖ヴェールガ公国の公爵の長女、ラフィーナ・オルガ・ヴェールガは、生徒会長兼聖女をこなす作中登場する権力者の一人です。
ラフィーナの思想は『貴族至上主義を払拭した平等な社会』であったため、彼女の権力にすり寄ってきたミーアには毛ほども興味がわかず、友諠を結ぶ事ができませんでした。
しかし、転生後のミーアの活躍には目を見張るものがあるためか、ラフィーナから接近し親交を深めることになりました。ただミーアにとって一番不興を買いたくない相手らしく、ミーアは内心怯えながらラフィーナと親友になる事に。
実は作中で一番ミーアを妄信しているのがラフィーナであり、その結果規律に厳しい以前の彼女では考えられないような女学生らしい性格に変わっていき、ミーアの影響力を最も受けているキャラクターです。
また、聖女としての役割は全うしており、ミーアの手助けを行うなど活躍の場が多いので必見です。
見どころ – 好きなシーン
ミーアの処刑される原因となった中に、帝国を襲った飢餓がありました。そんな渦中でさえ贅沢三昧だったミーアは、飢餓に陥った民衆の怒りを買う事になり、それがシオンなどの登場人物にまで波及して処刑に繋がりました。
その為、転生後のミーアは、食への感謝と拘りがスラム街の人種よりも凄まじいもので、飢餓に向けた対策を考案していきます。例えば、冬でも実る麦の開発や、それに必要な学者や生徒を募る事で新たに学園を創設するなど、才能を埋もれさせないように尽力しました。
また、ティアムーン帝国を舞台に繰り広げられる事件が勃発するのですが、その発端は「混沌の蛇」と称された邪教集団でした。蛇は、歴史の裏で暗躍して醜い思想を吹聴することで復讐の芽を育て、多くの不幸を築いてきました。そして、蛇の目的は帝国の滅亡であり、遂行にはミーアの存在が邪魔でした。帝国内、学園内、はたまた他国や移動する道中でさえどこに潜んでいるからわからない敵「蛇」を相手に、歴史の真実を紐解いていくミーア達の戦いは少年漫画顔負けの超大作を彷彿とさせます。
見どころ – 関係性、ここに注目!
ミーアとアベルです!
この作品の最大の本筋は「混沌の蛇」との対決という題目ですが、実はもう一つ忘れてはいけない目的があります。それは最大の難関処刑回避です。その為にミーアはアベルに目をつけました。
アベル・レムノは中堅国家の中でも軍事力に秀でたレムノ王国の第二王子で、将来は婿として迎えることが容易且つ王位継承権が低い。そして、もしサンクランド王国に攻め込まれた時に援軍を頼める距離に国が位置しているなど、ミーアにとって魅力的な王子様でした。
そんなミーアのゲスな魂胆を知らずにアプローチを受けたアベルは、ミーアと接する事で自分に自信がつき、内向的な性格から努力家へと逞しい成長を遂げる事ができました。
アベルの元々の女慣れした性格とキザな口調、また整っている顔立ちから、逆にミーアが意識をし始めることになり、二人が揃う場面だけは不思議と少女漫画特有の甘い空気に満たされ、別作品のようで恋愛要素も十分に楽しめます。
ぜひ、読んで楽しんでみてくださいね!