本作『俺の死亡フラグが留まるところを知らない』は、
漫画:乙須ミツヤ先生、原作:泉先生による異世界転生漫画です。
目次
あらすじ
気が付くと、平沢一希はゲーム『Brave Hearts』の悪役ハロルド・ストークス少年になっていた。体は自由に動くが、口調はハロルドのまま修正できない。重要イベントも回避できない。このまま物語が進めば、八年後に待ち受ける死亡イベントで自分は主人公たちに殺されてしまう。しかし主人公たちを物語から排除しまえば、魔王を倒す者が居なくなって世界が滅んでしまう。
物語の結末を変えず、ハロルドを生き残らせる為に、平沢一希はハロルドが行った悪行を調整し、主人公たちの好感度を上げていく。国内情勢にまで手を掛けて死亡フラグを折ってゆくが、人の心は思うように動かせず、物語に描かれていない人物や状況に手を加える事で未来が少しずつ変わってゆく。
出会うはずのないモンスターと遭遇し、所属するはずではなかった部隊に配属され、一年後に行われるはずだった全滅イベントへ派遣される。ハロルドの死亡フラグは折る端から生まれ、運命の車輪が加速する…。
登場人物紹介
ハロルド・ストークス(平沢一希)
ストークス家嫡男。十歳。選民思想の両親の元で育った悪役キャラ。八年後に主人公たちに殺される運命。
気が付くとハロルドになっていた平沢一希は、やりこんでいたゲームキャラになっている自分に驚き、悪役口調が変えられない事にも戸惑うが、定められた運命を回避する為に行動を始める。
目的はハロルドの死亡フラグ回避。物語が大きく変化すれば先が分からなくなり、死亡イベントを予測できなくなると考えた平沢一希は、ハロルドが関わる部分だけを調整し、ヒロインのコレット、婚約者のエリカ、主人公ライナーなど敵対するはずだった彼らから敵意や憎しみを削ぎ落す事に成功するが、好意と信頼を向けられている事には気付かず、物語は少しの変化で問題無く進んでいると思っていた。
しかしゲームの物語が始まる年代よりも前にイベントが発生するなどの差異が目に見えて現れ始め、死亡フラグを折る先からより強力な死亡フラグが立てられてゆく現実に対応を迫られる。
口の悪い悪役キャラというよりも、傲慢王子様キャラでとても愛らしい。
エリカ・スメラギ
スメラギ家子女。瘴気の被害で領地が傾き、ストークス家の支援を受ける事と引き換えにハロルドの婚約者となる。選民思想のストークス家を嫌っている。
ハロルドが使用人を魔法で焼き殺したと聞いて、嫌悪と悲しみに囚われていたが、それが虚偽であったと知り、彼を見直す、素直で可愛い良家の子女。ハロルドの言動に惑わされず、行動をよく見つめながら少しずつ好意を育てているが、八年後には主人公と共にハロルドと敵対する運命。
ユノ
エリカの従者。スメラギ家の隠密。美人で胸が大きくて、のんびりとした話し方が最高。隠密頭なのに技量の見せ場が無いのが非常に残念(今後にものすごく期待)。
ハロルドの行動を深読みする傾向がある。情報の真偽を確定させないまま当主に報告しているように見える。ハロルドが、使用人クララとその娘コレットを助ける為に、焼き殺したことにしていると承知の上で、噂の真偽を確かめる為に正面から本人宅の扉をノックして直接本人に問い質したり、見知らぬ訪問者に話してしまったり、と隠密スキルが見えない。
フィンセント・ファン・ヴェステルフォールト
聖王騎士団副団長。真面目で堅物な美青年。教科書に載るほどの有名人。
優秀すぎるハロルドを、反乱分子が送り込んだ間者ではないかと疑い、身元を確かめる。しかし不審な所を見付けられず、友人のコーディーに監視を任せている。ハロルドを疑いながらも才能は認め、成長させる為に庇護している。
シャノン
フィンセント副団長の部下。副団長の無茶な書類作成依頼にも当然のように応え、即時対応する優秀な眼鏡部下。
上司が不真面目なコーディーと仲が良いのが気に入らないようだが、上司と向かい合わせの机で仕事をしている豪胆さに心服する。とても可愛い。
見どころ – 好きなシーン
ハロルドのクローゼットにエリカが隠れ、使用人クララ親子を焼き殺した真相を知る場面です!
ハロルドは先々を見越してスメラギ家に無償支援をしますが、スメラギ家当主はそれを不審に思い、真意を確かめる為に娘エリカに手紙を持たせてストークス家に滞在させます。エリカと従者ユノの役割は、ハロルドの真意を探り、背景を確認すること。
しかしエリカは嫌悪しているハロルドをどうすれば許し受け入れられるのかと、ハロルドの部屋の近くで落ち込みます。そんな彼女を見付けた使用人ゼンは、大好きなハロルドと似た孤独をエリカの様子に見付け、二人の間に信頼を結ばせる為に彼女をハロルドの部屋のクローゼットに忍ばせ、部屋に戻ったハロルドに真相を話すよう誘導します。
これは完全なる裏切り行為。ゼンとしてはハロルドが孤独に壊れてしまわないようにエリカを添わせたいと思っていますが、エリカが近付く事こそがハロルドを窮地に追い込む事には気付いていません。
ハロルドもまたゼンを信用していますが、彼の善意が破滅をもたらす可能性を危惧しており、丁寧に釘を刺す事で新しい死亡フラグを立てています。まさに「小さな親切が大きなお世話すぎてハロルドの死亡フラグが新たに生まれた」ようにしか見えませんでした。
ゼンは二人を添わせたいが故にさらに誘導を行い、スメラギ家の事までハロルドの口を開かせてしまいます。エリカはこの情報を元に、ブローシュ村へ確認に行くようにと従者ユノに命じ、ユノの部下が使用人クララ家のドアを叩いています。
この場面に登場する三人に悪意は無く、善意と愛情によって行動した結果がハロルドを窮地に追い込んで行くという流れがすごく好きです。
見どころ – ここに注目!
海洋都市デルフィト「闘技大会」での主人公ライナー・グリフィスとハロルドの対戦です!
ハロルドはライナーの技量を確かめ、増長している自信を叩き壊す為に模造刀を折ります。ライナーが自信喪失して打ちのめされたところをハロルドは追い込み、ライナーに無敵コンボ「ブレイブモード」を発動させます。勝負はハロルドの勝利となりますが、ライナーの実力は向上し、二人の間に友情が芽生えます。
そしてライナーに付き添って来ていたヒロイン・コレットとも接触。いずれライナーと共に世界を救う一人となる彼女に厳しい言葉を与える事で、コレットもまた未来に向けて動き始めます。
常時やりすぎ戦闘なのはハロルドの意識が強く出ているからのようですが、子供たちのライバル成長は見ていて爽やかでとても良いです。必ず殺し合うことになる主人公たちを成長させたくはないが、弱いままだと世界が滅んでしまうという矛盾を飲み込み、ライバルへの助力を惜しまないハロルドが素敵です。
ぜひ、読んで楽しんでみてくださいね!