陰の実力者になりたくて! 作品概要

あらすじ

主人公でもラスボスでもなく、陰の実力者に憧れたシドは平凡なモブを演じながら来る日のために必死で鍛えました。
それでも地球では銃で撃たれれば死にますし、極論、核を打ち込まれればどうにもなりません。
ならどうすれば良いか、それを必死に考えたシドが到達した答えは、魔力だったのです。

結局魔力と誤認してトラックに突っ込んで前世を終えたシドですが、幸運にも魔力のある異世界に転生したのです。
新たな世界では徹底的にモブを演じつつ、陰の実力者になるべくこっそりと修行に明け暮れました。

鍛え上げたシドは今や盗賊程度なら軽く瞬殺する実力に育ちました。
ついでに助けたエルフが戸惑いながらも配下に加わります。
うん、配下って何だろう。
シドにも分かりませんがアルファと名付けたエルフにも分かっていません。
とりあえず魔人の復活を阻止するというそれっぽいお題目を立ててみたシドの陰で活躍する様子をご覧ください。

登場人物紹介

シド

中二病溢れる妄想も、実行に移せば尊敬に値するのかもしれません。マッスルになるほど現世で鍛えたシドは強化理論や精神力は素晴らしく、転生後にも活きているのでしょう。何となくごっこ遊びで始めたアルファとの馴れ初めですが、真面目一徹のエルフには刺激が強かったようです。完全に本気にしてしまいました。まあ、シドはそれに気付かず我が道を歩みますが、都合よく妄想が本当に起こったりする幸運(不運?)スキルでも保有しているのかと疑いたくなる男ですね。

本人は遊びの延長ですが、結果的に人を救っていくシドは格好良さと滑稽さの狭間で評価に悩みますね。でも、陰の実力者になるために尋常ではない努力や仕掛けをほどこしていますし、シドが満足しているのだから万事OKなのでしょう。

やはり本作の美味しい所は主人公のシドが全部掻っ攫っている気がします。本人がそうなるように行動しているのだから当たり前ですが、周りが思うように勘違いしてくれる様子は分かっていてもクスリとするものです。深夜にワイングラスをくゆらせたいがために、装飾品を飾り付け、ソファーに座る……ええ、大物が思案に耽っているようで何も考えていませんけれど。アルファにごっこ遊びをしたあと、放置していたら部下が100人以上になっていたとか鉄板ですね。

クレア

陰の実力者を演出するためには、シドのことを不甲斐ないと考えている姉、クレアの存在がとても有効に働きます。姉の前ではとにかく頼りなく演じるシドですが、姉弟だけに絡みは多く、いつかバレるのではないかという危機感もあります。クレアのシドに対する愛情は本物で、危険を承知で助けに来たりしますが、陰で働くシドにとっては障害となる報われないキャラクターですよね。最後まで秘密を守り切れるのか、というか守る必要があるのか、という点につっこんだら負けなんでしょうね。

アレクシア王女

モブを自認するシドに恋人など不要ですが、可能性としてはアレクシア王女になるのでしょうか。両手でFUCKポーズを受けるヒロインも珍しいですが。この時点でシドもモブに徹しきれてない気がしますし、彼の素を出せる稀有な存在なのでしょうね。

アルファ

アルファを筆頭にベータ、ガンマと個性的な部下たちがいます。メタ的には何人でも増やせる部下たちですが、会社や作家など各分野で頭角を現す人材のようです。というか、こういう人材を集めてきたアルファが一番凄いですね。

見どころ

ブシン祭で無様に負けることを画策するシド……必死に努力したのです。刮目せよ、くの字に吹っ飛び、素早く地の利を弧のように撒き散らす様を……うん、努力の方向性が間違っているとか無粋なことは言いませんよ。血反吐を吐き散らしながらモブ式奥義46個を披露しようとして、やり過ぎでレフェリーストップがかかるところまでがお約束です。いいですか、モブ演技は家に帰るまでが演技です。全身傷だらけに見えますがシドは無傷ですから、保健室に運ばれるとバレてしまいます。本当に面倒臭いことを真剣にやる男なのです。

魅力的な関係

モブあるあるでわざと高嶺の花のアレクシア王女に振られに行くシドに笑いました。念を押してカミカミで視線も泳がし、完璧な振られフラグ完成です。ええ、ボッキボキに折られましたけれど。王女もシドを利用しようとしていたり、一筋縄でいかない性格ですが、シドを手玉にとる稀有な存在なので、意外と良い相性なのではないでしょうか。シドを溺愛する姉のクレアやアルファを筆頭に従順な配下など、相手をするキャラクターによりシドの顔はコロコロ変わるので面白いですね。